「治療の研究はここまで来ています」ページでご紹介した通り、現在は動物でお薬の有効性が確認され、次は人間での有効性と安全性を確認する「治験」を目指して準備が進められている段階です。
日本筋ジストロフィー協会では、「神経・筋疾患医学情報登録・管理機構」を立ち上げ、福山型患者の遺伝子情報と臨床医学情報の登録受付をスタートしました。患者団体として、治験の動きをサポート・促進するのが大きな目的です。
ちなみに、「患者登録」「遺伝子登録」「医学情報登録」等の表現がありますが、すべて同じ登録を指しています。機構の新規文書やこのホームページでは「医学情報登録」という言葉を使っています。
医学情報登録では、大きく分けて「遺伝子情報」と「臨床情報」を登録します。
具体的には、
■臨床情報とは・・・現在の体の状況(運動・知能の発達状況、脳波異常・けいれんの有無、心機能、呼吸機能、嚥下など)についてです。
※治験にお金を出す国や製薬会社に対して、登録されている情報は、「新しい情報(=約1年単位で更新された情報)であり、正しい(=医師が証明したもの)である」ことを伝えなければいけないため、1年おきに登録情報の更新が必要となります。
なお、一人ひとりの更新時期に合わせて、機構から更新用書類が届きます。更新書類の提出期限はございません。冬場受診を避けているなど、ご事情のある方は、一番近い日程の受診のタイミング等で作成、ご発送ください。
毎年お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
現在治験スタート時期は明確になっていませんが、いざ治験がスタートできる段階になった時に、すぐに治験対象患者を選び、連絡ができるようにするため、前もって、現在どのような患者がいるのか、また、治験を希望しているかどうかを把握するために登録が始まりました。
お薬を、どんな年齢の子、どんな症状の子に、どのくらいの量投与するのかなど、安全に治験を行なうためには、様々な事前準備が必要となります。それらを研究するためには、まずは現在いる福山型患者の症例を検証する必要があります。
そのためには、小さいふくやまっこから大きなふくやまっこまで、広い年齢層の臨床医学データと、登録更新による症状の推移のデータが、あればあるほどよいそうです。 (現在登録目標数は200です)登録した遺伝子情報と臨床医学データは、安全なお薬の開発に役立てられます。
「治験」には、莫大な費用がかかります。そのため、製薬会社も患者数の少ない希少疾患のお薬の開発には積極的でなかったりします。行政に対しても、「お薬を待っている患者が多い」ということが、承認スピードアップへの後押しとなります。
ですが、福山型の患者数は、実は正確な統計がとられていません。つまり、登録をするふくやまっこの数の多さが、治療薬開発に不可欠な、行政・製薬会社に対する患者数アピールの一番わかりやすい手段となるのです。
現在、一足先に治験の段階まで進んでいるデュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、グラクソ・スミスクラインという大きな製薬会社が手を上げてくれたことで治験の実現が早まりました。福山型についても、同じように行政・製薬会社に、ふくやまっこの人数と症状の実態をアピールし、働きかけていくことが必要不可欠です。
研究開発が進むこの数年の間に、できるだけ医学情報登録数を伸ばし、ふくやまっこの患者数をアピールできる体制を整えることが、何よりの治験のサポートとなります。そのためには、ふくやまっこ家族が団結して行動して行く事も必要となって来るかと思います。
とはいっても、実際に「治験」となると、躊躇される方も少なくないと思います。ですが、医学情報登録=治験を受ける約束、ではありません。医学情報登録用紙には「治験情報の提供を希望しますか?」という欄があり、「情報は必要ない」を選択すれば、治験を受けたくないという意思表示も可能です。
上に書いたように、医学情報登録にはいろいろな目的がありますので、治験を受ける意思はないが薬の開発・患者の存在アピールには協力したいという方の登録も、とても大切です。
様々なお家の状況があり、考え方があるので、医学情報登録はしたくない、治験は受けたくないという考えも、もちろんあるかと思います。でも、もし治験には関心がない方でも、「福山型のお薬の完成に協力したい」「ふくやまっこの存在アピールはしたい」というお気持ちのある方は、ぜひぜひ登録をお願いできればと思います。